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こちらに掲載してある文章およびプロフィール画像につきましてはすべてと〜や(旧HN:魅月十夜)に帰属します。無断転載はご遠慮下さい。

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適当に駄文を書いていく予定です。 批評したい方、されたい方大歓迎です。
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11日に行われる第2回ノベルなび講演会・N-1グランプリにあわせて、開催されたN-1お試しオンライン大会、参加してみました。

いやー、40分って短いわ。
打ちながら考えながら、でなかったら絶対時間足りない。

尻切れトンボな感じにしあがってしまった(^^;

では、続きからどうぞ……


■ 続きを読む。 ■
100のお題:ぐい飲み
 その家に行ったのは、雑誌の取材で一度きりだった。
 青山先生、と呼んでいたと記憶している。当時私は編集部に入りたてだったし、あまり文芸書には興味がなかったから本や著者に関しても詳しくなかった。ただ、カメラで食える職業を探して知り合いから紹介された新聞社の編集職に飛びついただけだった。報道カメラマン、なんてものにあこがれていた部分は若干ある。だが、私が配属されたのは文芸誌の編集部だった。
 幸いなのは、一度何か書いてみろと言われて提出したものをみて、編集長が私に文章を書かせることを諦めてくれたことだろう。文章を書くのがなにより苦手だったので、渡りに船だった。締め切りまでにこれこれの文章を仕上げなければならない、というプレッシャーからは解放された。
 以来、原稿の催促やら受け取りの使いっぱしりか、対談記事のためのカメラマンとしてかりだされるかのどちらかで、社内にいるときには校正刷りのチェックや電話番といった、内勤の女の子と大して変わらない仕事しかしていない。
 そんな私をインタビュアーに指名してきたのが青山先生だった。
 青山先生とはほとんど面識がない。もしかしたら原稿の受け取りにお邪魔したことぐらいはあるのかもしれないが、なぜ私を指名してきたのか、まったくわからなかった。
 先生は仕立てのよい上品な和服姿で、もう半ば白い胡麻塩頭をきっちりと七三分けにしていた。原稿用紙のおかれた黒檀の机の前に座り、使い込まれた万年筆を手にして、ずり落ちてくる丸い眼鏡を気にも留めず、一心不乱に書く姿を雑誌で見た人も少なからずいるだろう。あの写真はあの日、私がフィルムに収めたものだ。
 締め切り明けの日だったから、先生は上機嫌で、雑誌用のポーズを注文しても快く承諾してくれたのを覚えている。雑誌ではまじめに原稿に向かっているように見えるが、先生は実に楽しげに応じてくれ、何度か顔が緩んでいるのを引き締めてもらったほどだ。
 写真撮影が終わって、家の中を案内された。庭付きの日本家屋は年代物で、聞けば生まれたときから住んでいる家だという。黒い柱に掛けられた古めかしい柱時計の時を告げる鐘が、私には新鮮に感じられた。
 居間に戻り、編集の準備してきた質問集をあらかた終えたのは、もう日が暮れかける頃だった。当たり前のように食事と床の準備がされていて、「泊まっていくだろう?」とうれしそうに先生に言われては断ることもできない。電話をお借りして編集に連絡を入れると、編集長は渋々ながらも許可をくれた。その代わり月曜日までにインタビューの内容を文章におこせと言う。テープから文章を起こすのは大して苦ではない。何もないところから文章を書けと言われるよりよほど楽だ。
 泊まれることを告げると先生は大層喜び、早速一献勧められた。折りしも満月の頃で、縁側のガラス戸を開けっ放して月見酒としゃれ込むことにした。先生は部屋の明かりを全部消してしまわれて、部屋に差し込む青白い月の光だけを頼りに酒を酌み交わす。庭にはなんという花なのかよく知らないが白い花が咲いていて、なんとも不思議な世界にいるような気がした。月を見、酒を飲む以外、喋ることすらもはばかられて、二人してじっと月を眺めては杯を空けた。
 何杯目だったろうか。先生にお酌をしたとき、私のカットグラスとは違う、いびつなぐい飲みを使っていることに気がついた。月の光の元では正確な色はわからなかったが、どちらかというと黒かった。もしかすると赤土のぐい飲みだったかもしれない。釉薬もかかっていない素焼きのようで、素人目には工業製品でないことぐらいしかわからい。骨董や陶器にもまったくうとい私には、茶器と同じく古い逸品物なのかな、程度に考えていた。
 話が途切れて、ふとそれを尋ねると、先生はしばらく私を見つめた後、大事そうにぐいのみを両手で包み込んだ。
「価値はつけられないね」
 それだけ言い、とびきり穏やかな微笑みを浮かべた。その日一日見てきた先生の表情の中では、一番やさしい笑顔だった、と今ならそう言える。だが、当時の私にはわからなかった。よほど高いものなのだろう、とそれ以上聞くことはなかった。

 翌日早々に屋敷を辞し、ごみごみした東京に戻って来ると、昨日の月見が嘘のような日々が待っていた。編集長にいやみを言われつつもテープ起こしをした原稿を上げ、写真を現像して提出したあとはきれいさっぱり忘れてしまった。
 電話番、カメラマン、使いっぱしり、と雑務に追われてあの日のことを思い出さなくなった頃だったろうか。先生の訃報を聞いたのは。
 担当編集と編集長と、それからなぜか私も通夜に連れて行かれた。いやまあ、忙しくなければおそらく、自分から列席したい、と申し出ていただろうとは思う。一宿一飯という言葉があてはまるかどうかはわからないが、お世話になったのは間違いないのだから。
 二人で酒を酌み交わしたあの部屋の奥に、先生は眠っていた。
 庭で立ち尽くしていると、老婦人に声を掛けられた。あの日、お世話になった家政婦さんだった。顔を覚えてくれていたのだろう。お悔やみを述べると、家政婦さんは手にしていた新聞紙の包みを私に差し出してきた。
「先生のご遺言なんです。受け取ってあげてください」
 闇雲にお断りしようとしていた私は、その言葉を聞いて押し頂いた。隣で見ていた編集長は変な顔をしたが、何も言わなかった。なんだかその場で開けることをはばかられてそのまま喪服のポケットにしまいこみ、通夜を終えた。
 駅に向かうタクシーの中で開いたそれは、あのぐい飲みだった。不思議な月夜を共有したえにしの記念だったのだろうか。案の定赤土で練られ、釉薬もなにもかかっていない素焼きのぐい飲みだ。手でこねたのだろう、小さな手のあとが残っている。
 こんなのを昔、作った覚えがあった。小学生の頃、どこにでもよくある、みやげ物屋の体験陶芸工房だったろうか。うまくできずにただの土くれに戻ってしまったのが悔しくて、大泣きした。工房の人が優しく手ほどきをしてくれ、新しい土もくれてなんとか形のあるものに仕上げてくれたように記憶している。その後、その時に作ったはずのものがどうなったか、まったく覚えていない。何を作ったのか、すら忘れ去っている。今の今まで思い出さなかったが、ああいう陶芸などの体験工房を見るといやな気分になるのは、あのときのトラウマだったのだろう。
 何気なくぐい飲みの底を眺めて、私は息を飲んだ。
 底には下手なひらがなで「たのくらふうた」と刻んであったのだ。
 私の名前。
「先生には黙っておいてくれって言われたんだけどな」
 隣で見ていた編集長が、ぽつりと言った。
「お前のお袋さん、お前が生まれてからすぐに離婚してるだろ。その時に離婚したのが青山先生なんだと。そのぐい飲みの話はよく聞かされたよ。お前のお袋さんが、先生が当時働いていた工房にお前を連れて行ったんだそうだ。大泣きしているお前を見て、会いたくないから泣いているのだと思った、と言っておられたよ」
 あのときの微笑みは息子に対する微笑、あの目は息子を見守る目。それならば、価値なんてつけられるはずがない。
「編集長、すみません」
 振り向くと、編集長はうなずいた。タクシーを止めさせて、編集長と担当編集は降り、そのまま私はタクシーで屋敷に取って返した。
 息子として、なんて立派なものじゃなかった。父親、といわれてピンと来る年齢でもない。
 ただ、あの夜を共有した者として、最後まで見届けるのが自分の役目のような気がした。このぐい飲みを託された者として。それを、先生は期待しているのだろう。そう、あの時の私は確信していた。

 ぐい飲みならそれ、そこにある。
 月の良い日はあの日と同じように縁側を開け放して、明かりをすべて消してね。
 親父と二人で酒を酌み交わすために使っているよ。最近は息子が乱入してきて使っている。こうして、物も記憶も、受け継がれていくのかもしれないね。

[ノベル][梅雨] 4本目
『雨なんか嫌いだ。』
 エアコンのない部屋でじめっとした扇風機の風を受けながら、大田はキーボードを叩いた。灰皿から吸いさしのタバコを取り上げてくわえる。
「何書いてんの? エッセイ?」
 夕べ拾った行きずりの女が覗き込んでくる。
「うるせぇ。お前はさっさと帰れ」
 文章を書いてるときに覗かれるのは一番嫌いだ。
「やだよ。雨降ってるのに。あんたいつまでいてもいいって言ったじゃん」
 座る場所のない部屋。座れるのは軋むベッドの上だけだ。スケスケの下着だけで後ろから腕を絡めてくる女をベッドに押しやると、「座っとけ」とキス一つくれてやる。
「ちぇ。ねえ、やろうよ」
「これ片付けてからな」
 つまんない、と女はベッドの横に積み上げられた本を崩しにかかった。雪崩を打ってベッドの向こう側に消える、本の山。女はがびがびになったH本をさも汚い、といわんばかりに指二本でつまみ上げ、ゴミ箱に放った。
「こんなのより生の女のほうがいいに決まってんのに」
「そりゃお前みたいに都合のいい女がそこらじゅうに転がってないからだろ」
 かちゃかちゃ。キーボードが湿気で重くなった気がする。だから雨は嫌いなんだ。
「あたしは都合のいい女じゃなぁいっ」
「尻軽女のくせに」
 大田はキーボードを押しやって腰を浮かした。ベッドの裏側に隠してある本を探そうと後ろ向きになってる女を引きずり倒し、下半身に手を滑らせる。抗う素振りを見せた女は、じきにうなり声ではない声をあげはじめた。
「ほら、都合のいい女じゃねぇか。やりたいだけなんだろ?」
 手を止め、体を起こすと、女はうるんだ目で懇願する。
「ねえ、お願い、はやくちょうだいよぉ」
 いきり立つ一物にむしゃぶりつく女。大田は女の頭を押さえるとそのピンクの口に精をぶちまけ、再び蹂躙しにかかった。

 ピンポーン。ピンポンピンポン。

 玄関のチャイムが鳴る。続いて聞きたくもない年寄り女のだみ声が響き渡った。
「ちょっとぉ、大田さん? 一人寝がさびしいのはわかるけど、動物連れ込んじゃだめだって言ったろ? しらばっくれたってだめだよ。声が聞こえたんだからね」
「あ、あのぉ、聞き違いじゃないっすかぁっ? ほらっ、テレビの音とか」
 大田は大慌てで服を着ながら応答した。
「老人だと思って馬鹿にするでないよ。あんたよりは耳がいいつもりだけどねえ。ほれ、今も鳴いた」
「い、いや、これはあの、猫のDVDでして……」
「本当だろうねえ。ならとっとと扉開けなっ」
「は、ただいまっ」
 ようやくベルトを締めて、大田は玄関をあけた。ふすま一つない部屋の中を、大家の老婆は玄関からじろっと見回した。タイミングよく、パソコンが「にゃぁ〜」と鳴いた。メールの着信音だ。
「ふん、本当みたいだね。今度動物連れ込んだら出てってもらうからね」
「は、分かってます」
 ばたん、と荒く扉を閉めて、大家は去った。念入りに鍵をかけて大田は服を脱いだ。
「やれやれ。ほれ、出て来い」
 パソコン机の下に放り込んだ箱を開けると、彼女は体をくねらせて大田にかじりついた。
「かまってやるから、鳴くのだけは勘弁してくれ。な?」
 三毛の雌猫は分かったのか分からないのか、にゃーん、と一声鳴いた。


1302文字
[ノベル][梅雨] 3本目
 雨なんか嫌いだ。
 雨の日はあの人が来る。蓮の傘を捧げ持つ侍女を連れた、透明で美しい彼女。
 いくつの頃からだろう、あの人が見えるようになったのは。
 じいちゃんの葬儀のときだったろうか。
 葬儀に似つかわしくない、淡い真珠色の打ち掛けの裾を引きずって、あの人は雨の中、庭に佇んでいた。
 雨なのに。
 他の人たちが屋根の下に退ける中、あの人は木の下でじっとじいちゃんの遺影を見ていた。
 ぼくと目が合ったとき、あの人はほのかに笑ったのだ。
 ――わたしが見えるのかえ?
 そう、聞こえた。ぼくは家の中にいて、あの人は庭に立ってたのに。
 雨なのに窓を開けておくんじゃない、とお母さんがいうから窓を閉めたら、あのひとはすこしさびしそうな顔をした。
 そして、またな、とあの人は確かに言ったのだ。
 それ以来、雨の日になるとあの人は来る。
 部屋の中のじめじめはさらにひどくなるし、エアコンは嫌いだといってつけさせてくれない。
 これなら外に立っているのと同じだ。
 雨が降ったらあずまやに来いと言っていたけれど、ぼくはあずまやを知らない。
 だから、あの人は来る。
 ああ、雨が降り出した。
 今日は遠回りして帰ろう。


492文字。
もう少し長めにしてみようかなあ
[ノベル][梅雨] 2本目
 雨なんか嫌いだ。
 ミオは地表モニターに映る黒雲を睨みつけた。予報が外れるなんて。
「ちょっと、どういうことなのよ」
 起動エレベータの気象予報官は目の下にくまを作ってひたすら低姿勢だ。当たり前だ。この惑星は予報が当たらなきゃ命取りなのだから。
 通信を終了させると、ミオは大きく伸びをした。
「困ったなぁ。特急料金で預かった品なのに。ねえ?」
「はい」
 予備シートに縛り付けられたままの黒髪の青年が返事をした。青年、というのは間違いだ。正しくは、このまま宇宙に放り出しても大丈夫な船外活動用成人型アンドロイド。寒冷地仕様でもあるらしい。大気に酸素が含まれ過ぎているあの惑星では必需品だ。
「雨季に入ってるなんて。……とと、なぁにこれ?」
 雨の中を超低速通信が入る。今時こんな通信方法、誰が覚えてたのかしら。
 船の人工知能『モラン』にデコードするよう命令しておいて、ミオはドリンクメーカーを操作してコーヒーを淹れた。装置自体がじっとり湿っているような気がするのはきっと気のせいだ。船内の湿度はきちんと保ってあるんだから。
 席に戻ってもまだ通信中だった。
「なになに……雨季に入ったからアンドロイドいらないですってぇ!」
 後半の文章は、星間訪問販売法に基づくクーリングオフの申請だった。
 つまり、すました顔した超高額商品は、この瞬間ただの不良在庫に成り下がったのだ。
「ふっざけやがってっ! あたしを誰だと思ってるんだいっ」
 コンソールをガツンと蹴飛ばす。
「わかってるわよね、『モラン』。気象予報官に正式な抗議文書と損害賠償の請求書を送りつけてやって。それから今回のクライアントは優先度をDに変更。次に困ったって連絡してきたらしっかりふんだくってやるんだから」
 イエス、マム、と『モラン』が答えた。
「ところで、私はどうなるんでしょうか」
 動く不良在庫は困ったような顔をしてみせた。
「返品……かしらねえ」
「それは困りましたねぇ。特殊環境用に調整済みの個体ですので、起動時点で返品不可と売買契約書にあるのですが」
「うそっ」
 ミオはあわててパネルを叩いた。呼び出された売買契約書を丹念に読み、特約条項を見つけ、またもコンソールを蹴飛ばした。動く不良在庫の台詞は本当だった。
「クソったれっ。あンのやろー、分かってて起動輸送を勧めたなっ」
 道理で、荷物を受け取ったときにわざわざ梱包を解いて見せたわけだ。普段から『歩ける荷物は歩け』主義のミオは格好のカモにされたのだ。
「で、どうしましょう」
「ちくしょうっ、どうもしないわよっ。あんたの売り飛ばし先が決まるまではっ」
「しかし、あなたさまの声紋でユーザー登録が済んでおりますが」
「正式譲渡すれば済むでしょうっ。まさかそれもダメなわけ?」
「いえ、それでしたら問題ありません。ただ、ユーザー登録をしなおすことになりますので本部に返送……」
「あーもうめんどくさいっ。いいわよっ。あんたをあたしの名義でバイトに出すなら問題ないでしょっ」
「それはアンドロイド管理法に……」
 何を言っても言い返してくるアンドロイドにぶちきれてミオは机を叩いた。
「うるさいっ、法なんかよりあたしの言葉のほうが優先よっ。ここにいたいなら自分の食い扶持ぐらい稼ぎなさいっ」
「しかし私に食料は……」
「分かってるわよっ、あんたの動力燃料はあたしの食事より高いんだからっ。どっちにしろあんたを養えなくなったらあんたも動けなくなって単なるスクラップ行きよっ。わかったっ?」
「わかりました」
 青年は観念して口を閉じた。
 同じような環境なら働けるはずだ。思いあたりをいくつか当たればなんとかなるはず。
 ミオは声高らかに宣言した。
「んじゃ、もうこの星に用はないわ。引き上げるわよ、『モラン』」
 イエス、マム。管制官との通信が開始される。ミオはすばやくシートに飛び込んで体を固定した。
「どちらへ?」
「あんたが働ける星へよ。そういやあんた、名前はないの?」
「まだつけていただいておりません」
「んじゃ、ジョン、でいいわね。いっくわよ〜」
 出港許可、と『モラン』。繋留ケーブルを切り離し、便利屋シェケルは宇宙へと滑り出して行った。

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1696文字。

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とーや

Author:とーや
駄文書き。批評大歓迎です。

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